2010年 6月 16日

山笠の山車に使う担ぎ棒、どんな木を選べばいいの?(3)


福岡県糸田町「中下山笠(なかしもやまかさ)」
 
三日間に亘り書いていますので、
この山笠の山車に使う担ぎ棒について、
もう一度おさらいしたいと思います。
 
長さ11mの木2本で、重さ2トンほどの飾り山を担ぎます。
そのために、
①真直ぐな木が望ましい。
②担ぐため、できるだけ軽い方がよい。
③担ぎやすいのは、硬くて、しならない物。
④折れてしまうのはNG。
この4つの特性を、バランスよく兼ね備えている物を考えます。
 
まず、①や②を勘案すると、広葉樹を選ぶのは難しくなります。
③の硬さこそ、申し分ありませんが、広葉樹は重たいのです。
それに、真直ぐな木が希少なため、割高となります。
 
では、針葉樹の中で、今回の条件に優れた木は何が良いか、
次に考えてみたいと思います。
 

 
現在使用しているのはヒバです。
まずは、その特性と比較しながら、杉とヒノキを見てみましょう。
 
②の重さはどうか?
ヒバの気乾比重は41とあります。
気乾(きかん)比重とは、木材中の水分をゼロにしたときの木の重さのことです。
ちなみに、ヒノキも同じ41で、杉は38。
ヒノキとヒバの重さは同程度、杉は少し軽くなります。
 
③のしなりやすさはどうか?
これは、曲げヤング係数というところを見ます。
ヒバは8.2に対して、ヒノキは10.4、杉は7.2。
ヒノキのほうがヒバより硬く、杉はヒバよりしなりやすい、と読めます。
 
④の折れやすさはどうか?
これは、曲げ破壊係数を見ます。
ヒバは698、ヒノキ744、杉582。
これもヒノキが最も折れにくいとデータが示しています。
(ちなみに、④に限っては、ヒノキより折れやすいヒバや杉でも、
 太く使いさえすれば、同等の強度を確保できます。)
 
これまでの4つに加え、担ぐときの肩への食い込み具合も考えてみましょう。
それは、表面の硬さがどうか、というデータから推測できます。
直径10ミリの鋼球で50㎏の荷重をかけた、ブリネル氏硬度です。
 

 
このデータを見ると、ヒバは2.37~3.11と硬く、
ヒノキの1.49~2.16 と杉の1.42~2.28は同程度の数字。
これから推測すると、ヒノキと杉は、肌触りが柔らかいということが言えると思います。
 
(ただし厳密には、アスナロと青森ヒバは品種が違うのだそうです。
 でも今回は、どちらも天然木ですし、同等の特性であると考え判断しました。)
 
以上を総合的に判断すると、今回の用途ではどの木が相応しいのでしょうか。
 
私は、ヒバよりヒノキのほうが良いのではないか、と推察しました。
それに、ヒノキであれば、高齢樹の木が福岡県産材で調達可能だし、
金額も青森ヒバより安く抑えられそうです。
(11mなので青森からの運賃だって馬鹿になりません…)
 
また、歴史の継承という意味では、アスナロを使うことも意義あるのでしょうが、
前回は「明日(ヒノキに)なろう」の木を使ったが、今回は機が熟し「ヒノキ」となった、
という物語も(強引かもしれませんが)「有り」かな、と思った次第です。
 
とはいえ、ヒノキでありさえすればよい、訳ではありません。
現役の担ぎ棒のように、80年使用できるような耐久性を備えるには、
赤身材でなくてはなりません。それも年輪のつまったモノ。
そこで今回、下の写真のような120年生程のヒノキをご提案することにして、
先週末、候補である立木を視察に行ってまいりました。
(山道が藪と化し、この1月に買ったばかりの愛車
 ホンダ・クロスロードは傷だらけとなってしまいましたが… 涙)
 
 
 
これで120~130年生なので、かなり緻密な年輪をしていると思われます。
このブログを、中下山笠の方もご覧のことと思いますが、いかがでしょうか。
 
ただ一つ、どうしてもクリアできない、大きな問題を抱えています。
それは、「割れ」です。
青森の方にお伺いすると、ヒバの方がヒノキよりさらに割れやすいということですが、
それでもヒノキは杉に比べ、割れがすぐに、そして深く入ります。
今回は芯持ち材となりますので必ず干割れが発生します。
そして、何も施さなければ、丸太の芯まで割れは入ってしまいます。
その程度をいかに少なくするか、それは自然の摂理に逆らう難問です。
 
建築に使用する柱などであれば、通常「背割り」というものを入れますが、
今回はその方法がとれません。
どうすればよいか現在精査中ですので、改めてご報告したいと思います。
 
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誤解のないよう付加えますが、今回の記事は、山笠の担ぎ棒全てが
ヒノキであったほうがよい、という主旨で書いているのではありません。
たとえば、博多祇園山笠の舁き山の担ぎ棒であれば、
おそらく杉で提案させていただくことになると思われます。
山車の形態によって考え方は異なってきますので、
あくまでこの記事は、ご参考程度にお願い致します。

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