2010年 6月 15日

山笠の山車に使う担ぎ棒、どんな木を選べばいいの?(2)


長さ11mの担ぎ棒2本で、2トンの飾り山を車輪無しで担ぐ、
そんな過酷な用途に相応しい木は何なのか、
まずは、その使われ方を観察するため現地(福岡県糸田町)を訪ねました。
 
なるほど、その担ぎ棒は年輪が詰まっていて、
荒々しい木目をしており、力強さを醸し出しています。
「これは木目が猛々しくて素晴らしい木ですね~」
惚れ惚れしながら声をかけると、
みなさん、とても嬉しそうに応えてくれます。
 
「この木は硬いから、この細さにできるんです。
 細いからもあるだろうけど、軽くてホントに担ぎやすくて・・
 他の地区もこの担ぎ棒を真似たいと見に来るんですよ。」
 
これだけたくさんの人が、木に対して、熱い思いと誇りを抱いている…
何か特別な絵が描いてあるわけでもなく、彫刻があるわけでもない、
木を削っただけの、ただの2本の棒にすぎないのに…
 
日頃、木に対する関心が薄れている、と思い悩んでいる私は嬉しくなりました。
そうこうしていると、前日お電話いただいたNさんが、
これまでの経緯を話してくれました。
 
「この担ぎ棒は80年程前、隣町の採銅場の近くに生えていたアスナロを伐って、
 皆で運んできた、という言い伝えがあります。
 ところが、複数の大工さんに見てもらったところ、杉ではないかと言う声が多くて…」
 
なるほど、杉と見えなくもありません。
笹杢(ササモク)状の木目が際立ち、ヒノキでないのはわかります。
とはいえ、杉ではないと感じました。
木目の感じから見た私の第一印象は栂(つが)。
でも栂は寒冷地。100年前の九州でも希少で、標高の高いところにチラホラあった程度のはず。
それにもしも栂ならば、もっとこげ茶色の経年変化となるはず。つまり栂ではない・・
 
樹種の特定は一休みして、
杉やヒノキの担ぎ棒を使っている他地区の山笠を見せていただくことにしました。
最初に杉の担ぎ棒を見学しました。Nさんは言います。
 
「こうして端を抱えあげると、木がしなるでしょう。
 柔らかいと担ぎにくいし、杉で折れたところもあるんですよね。」
 
次に、ヒノキの担ぎ棒を見学しました。
端を持ち上げてみましたが、硬くて、棒は微動だにしません。
これなら、しならないので担ぎやすいでしょう、とNさんに尋ねると、
 
「ヒノキはたしかに硬くていいのですが、私たちの棒より随分重たく感じます。
 そこで、もしかすると私たちのモノは、硬い品種の杉なのでは?
 と思いご連絡したのです。」
 
杉より硬くて、ヒノキより軽い(?)木…
天然木特有の緻密で荒々しい木目をした針葉樹…
 
今回依頼を受けた中下山笠の寄り合い所に戻った私は、
先ほどの言い伝えを再度思い起こしました。
アスナロといえばヒバ(桧葉)。
これだけ緻密な年輪の九州産アスナロを、製材品で見たことはないけれど、
たしかに、青森ヒバに似ている…
 
「おそらくこの木は、言い伝えられているアスナロで間違いないと思います。
 青森ヒバの特性が参考になるでしょうから、調べてからご連絡しますね。」
 
そういって、私は現地を後にしました。
この話は次回へと続きます。
アスナロとわかったのならば、それを調達すればよいではないか、
とお思いかもしれませんが、私は迷っていました。
なぜなら、なるべく近くの木を使いたいからです。
 
年輪の詰まった長さ十数メートルの直材のアスナロを、九州産で探すのは難しい。
人工林が多い九州では、天然木のアスナロは希少だからです。
それゆえ、どうしてもとなれば、天然林の青森ヒバを選択することになります。
幸い、青森ヒバの入手ルートは持っていますし、
金額的な折り合いをつけることも可能かもしれません。
ヒバが、この用途に最も相応しい木であれば、その選択肢は有力でしょう。
でも私は、九州の木で実現できる方法を、もう少し調べてみたくなったのです。
 
いよいよ次回は、私がどんなご提案をしたのか、お話ししたいと思います。

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