アーカイブ 「木挽棟梁の木を活かす知恵」

2018年 8月 24日

講演会「今こそ、木に住まう」~住まいは山の樹から考える~

9月15日13時半より、クローバープラザで(春日市)で講演させていただくことになりました。
定員50名ということですが、すでに超えているそうで、いま会場を調整いただいています。
連休前で何かとお忙しい折と存じますが、よろしければお運びください。
いま考えていることをお話しさせていただこうと思っております。

チラシ表


チラシ裏

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2018年 8月 24日

いわき市から総社市へ、板倉仮設住宅の移築再利用 始まる


「福島県いわき市(東日本大震災)から岡山県総社市(西日本豪雨災害)へ 板倉の仮設住宅26棟52戸の移築再利用が始まる」(8/08)
http://www.itakurakyokai.or.jp/post/1048
木の家を移築再利用する。昔当たり前に行われていたことがよみがえります。
良質な木の住まいは、良質な社会のストックである、ということを少しでも多くの人が気づいてくれるよう願っています。
 
8月22日に福岡の住幸房を率いる池尾チームが現地入り。
台風迫る23日の午前中には土台敷きをしました。


先発の3棟は完成が近づいています。


一日の間に、様々な工程の建物を見ることができます。

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2018年 7月 24日

明日、手放したくない木を納品します

 
明日、手放したくない木を納品します(笑)
写真は150年ほどの杉の木で、元の直径が1350㎜くらいありました。
それを半割して芯の部分を除いた盤木です。
お寺の本堂の向拝(ごはい)という場所の海老虹梁(えびこうりょう)という部材に用います。
裏にも節はあまりありません。
この木は、祖母と尊敬する伯父の遺骨が眠るお寺に嫁ぎます。
嫁ぎ先として最高の場所だと思っています。いつでも会いに行けますし。
先人の育てられた労苦のうえにおいて今の私の仕事は成り立っている、とつくづく思います。有難いです。
 

尚、もっと目詰まりの銘木は吉野などに行けば多々あると思います。
その点で言うと、吉野などの木を見慣れている人には目粗だと感じられるかもしれません。
私にとって、この杉が好きなところは最初の30年くらいで直径一寸五分(45ミリ)しか幹がないのに、
そこから急に年輪幅が大きくなって、切られるまで年輪幅がほとんど変わらない。
150年生きていても旺盛な生長を見せる、木の生命力のようなもの、勢いを感じさせるところです。
自分もこうありたいな、と思うのです。
材質においても、九州の杉という感じです。
春目(早材)の繊維がつまっていて、秋目(晩材)との比重の差が少なく、均質な材質で、反りや狂いがありません。
色もご覧の通りよくて心材の初期含水率が低いのです。
九州杉の在来品種メアサ系の杉で、私はもっとも好んで使っています。
立ち姿の写真のないところが残念です。
このような木は、そんな履歴が必要だと感じます。森の物語を語らねばなりません。

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2014年 6月 20日

住まいのモノサシ㉑ 長寿の樹

林業が舞台の映画『WOOD JOB! 神去なあなあ日常』を見て感じたこと。
それは、こんな木は末永く大切に使われて欲しいなということでした。
三浦しをんさんの原作も、本当に面白くて一気読みしました。お奨めします。

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2014年 2月 21日

薪ストーブの基礎知識


いま、静かな人気を集める薪ストーブ。
現在普及している薪ストーブは燃焼効率が高く、40坪くらいの家なら1台で賄えます。
薪ストーブ導入の際に知っておきたいことについて、グランビル九州の柳本さんに伺いました。
 
【暖め方の種類】
暖め方には、輻射式対流式の二種類があります。
輻射式は、薪を燃やすことでストーブ本体が温まり蓄熱し、その輻射熱で室内を暖めます。
ストーブトップに鍋などを置ける機種が多く、薪ストーブ料理などを楽しむのにも適しています。
対流式は、火室の周囲が二重構造になっていて、中を通る空気を暖めて吹き出し口から放出し部屋を暖めます。
正面ドア以外の側面、背面は高温にならないのが特徴。ストーブトップで鍋などを暖められない機種もあります。
 
【二次燃焼方式】
住宅地などでは、周辺環境やご近所への煙の心配をされる方も多いと思います。
しかし、薪ストーブには、煙をクリーンにするための様々な工夫がなされています。
その一つが二次燃焼方式。薪の燃焼で発生した未燃焼ガスを再燃焼させ、排気をきれいにする仕組みです。
二次燃焼方式には2種類あります。触媒式クリーンバーン方式です。
触媒式は、未燃焼ガスが触媒を通ることで二次燃焼する仕組み。
二次燃焼には通常、550℃以上が必要ですが、触媒により250℃前後でも二次燃焼が起きます。
触媒は3~5年ほどで交換が必要。価格は1万数千円から3万円ほど。薪の燃費は良いです。
クリーンバーン方式は、二次燃焼用の空気を供給し、
未燃焼ガスが燃焼する550℃以上に温度を上げることで二次燃焼させます。
触媒式に比べ、燃費が悪く薪の消耗は多くなりますが、
メンテナンスが楽で、触媒などのランニングコストはかかりません。
 
【煙突】
煙突は、薪ストーブ本体と同じくらい重要な部分。
薪が燃えて煙突が温まることで、上昇気流(ドラフト)が発生します。
このドラフトが煙を屋外に排出し、同時に火室に空気を取り込む働きをします。
もしドラフトがうまく起こらない場合は、排気が滞り薪が燃えにくくなります。
最悪の場合、煙突の中の煙が液化してタールになり、煙道火災の原因となります。
 
煙突は、ストーブ本体から真っ直ぐに4~5メートル立ち上げるのが理想。
煙突の断熱性能も重要です。
外気の影響を受けて煙突が冷えると、排気の速度が低下します。
シングル煙突二重煙突三重煙突などがありますが、
複数の鋼板の中に断熱材が充填された煙突が安全面では優れています。
ストーブ本体とは別に、それなりの費用がかかります。
 
【木材利用ポイント】
薪ストーブを購入すると、今なら木材利用ポイントがもらえます。
木材利用ポイントのホームページ↓
http://mokuzai-points.jp/
 
ポイント数は、ストーブ本体・定価の10%のようです。
地域の農林水産品、農山漁村地域における体験型旅行、商品券などと交換できます。
薪ストーブご購入は、2014年の9月30日まで(延長されました)。

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2013年 10月 31日

170年生日田杉の嫁ぎ先


 
先月、170年生の日田杉とのご縁をいただきました。
7m 末口74㎝ 枝打ち材 昨年末の寒伐り材です。
無事に嫁ぎ先が決まり、先週末、建て主の立会いの下、製材をさせて頂きました。
 

5m × 12㎝ × 36㎝の柾目の梁が4本。
 

中径で70㎝を超える無節の板が2枚とれました。
 
本当に素晴らしい杉の木でした。心より感謝いたします。

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2010年 6月 16日

山笠の山車に使う担ぎ棒、どんな木を選べばいいの?(3)


福岡県糸田町「中下山笠(なかしもやまかさ)」
 
三日間に亘り書いていますので、
この山笠の山車に使う担ぎ棒について、
もう一度おさらいしたいと思います。
 
長さ11mの木2本で、重さ2トンほどの飾り山を担ぎます。
そのために、
①真直ぐな木が望ましい。
②担ぐため、できるだけ軽い方がよい。
③担ぎやすいのは、硬くて、しならない物。
④折れてしまうのはNG。
この4つの特性を、バランスよく兼ね備えている物を考えます。
 
まず、①や②を勘案すると、広葉樹を選ぶのは難しくなります。
③の硬さこそ、申し分ありませんが、広葉樹は重たいのです。
それに、真直ぐな木が希少なため、割高となります。
 
では、針葉樹の中で、今回の条件に優れた木は何が良いか、
次に考えてみたいと思います。
 

 
現在使用しているのはヒバです。
まずは、その特性と比較しながら、杉とヒノキを見てみましょう。
 
②の重さはどうか?
ヒバの気乾比重は41とあります。
気乾(きかん)比重とは、木材中の水分をゼロにしたときの木の重さのことです。
ちなみに、ヒノキも同じ41で、杉は38。
ヒノキとヒバの重さは同程度、杉は少し軽くなります。
 
③のしなりやすさはどうか?
これは、曲げヤング係数というところを見ます。
ヒバは8.2に対して、ヒノキは10.4、杉は7.2。
ヒノキのほうがヒバより硬く、杉はヒバよりしなりやすい、と読めます。
 
④の折れやすさはどうか?
これは、曲げ破壊係数を見ます。
ヒバは698、ヒノキ744、杉582。
これもヒノキが最も折れにくいとデータが示しています。
(ちなみに、④に限っては、ヒノキより折れやすいヒバや杉でも、
 太く使いさえすれば、同等の強度を確保できます。)
 
これまでの4つに加え、担ぐときの肩への食い込み具合も考えてみましょう。
それは、表面の硬さがどうか、というデータから推測できます。
直径10ミリの鋼球で50㎏の荷重をかけた、ブリネル氏硬度です。
 

 
このデータを見ると、ヒバは2.37~3.11と硬く、
ヒノキの1.49~2.16 と杉の1.42~2.28は同程度の数字。
これから推測すると、ヒノキと杉は、肌触りが柔らかいということが言えると思います。
 
(ただし厳密には、アスナロと青森ヒバは品種が違うのだそうです。
 でも今回は、どちらも天然木ですし、同等の特性であると考え判断しました。)
 
以上を総合的に判断すると、今回の用途ではどの木が相応しいのでしょうか。
 
私は、ヒバよりヒノキのほうが良いのではないか、と推察しました。
それに、ヒノキであれば、高齢樹の木が福岡県産材で調達可能だし、
金額も青森ヒバより安く抑えられそうです。
(11mなので青森からの運賃だって馬鹿になりません…)
 
また、歴史の継承という意味では、アスナロを使うことも意義あるのでしょうが、
前回は「明日(ヒノキに)なろう」の木を使ったが、今回は機が熟し「ヒノキ」となった、
という物語も(強引かもしれませんが)「有り」かな、と思った次第です。
 
とはいえ、ヒノキでありさえすればよい、訳ではありません。
現役の担ぎ棒のように、80年使用できるような耐久性を備えるには、
赤身材でなくてはなりません。それも年輪のつまったモノ。
そこで今回、下の写真のような120年生程のヒノキをご提案することにして、
先週末、候補である立木を視察に行ってまいりました。
(山道が藪と化し、この1月に買ったばかりの愛車
 ホンダ・クロスロードは傷だらけとなってしまいましたが… 涙)
 
 
 
これで120~130年生なので、かなり緻密な年輪をしていると思われます。
このブログを、中下山笠の方もご覧のことと思いますが、いかがでしょうか。
 
ただ一つ、どうしてもクリアできない、大きな問題を抱えています。
それは、「割れ」です。
青森の方にお伺いすると、ヒバの方がヒノキよりさらに割れやすいということですが、
それでもヒノキは杉に比べ、割れがすぐに、そして深く入ります。
今回は芯持ち材となりますので必ず干割れが発生します。
そして、何も施さなければ、丸太の芯まで割れは入ってしまいます。
その程度をいかに少なくするか、それは自然の摂理に逆らう難問です。
 
建築に使用する柱などであれば、通常「背割り」というものを入れますが、
今回はその方法がとれません。
どうすればよいか現在精査中ですので、改めてご報告したいと思います。
 
*****************************************
誤解のないよう付加えますが、今回の記事は、山笠の担ぎ棒全てが
ヒノキであったほうがよい、という主旨で書いているのではありません。
たとえば、博多祇園山笠の舁き山の担ぎ棒であれば、
おそらく杉で提案させていただくことになると思われます。
山車の形態によって考え方は異なってきますので、
あくまでこの記事は、ご参考程度にお願い致します。

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2010年 6月 15日

山笠の山車に使う担ぎ棒、どんな木を選べばいいの?(2)


長さ11mの担ぎ棒2本で、2トンの飾り山を車輪無しで担ぐ、
そんな過酷な用途に相応しい木は何なのか、
まずは、その使われ方を観察するため現地(福岡県糸田町)を訪ねました。
 
なるほど、その担ぎ棒は年輪が詰まっていて、
荒々しい木目をしており、力強さを醸し出しています。
「これは木目が猛々しくて素晴らしい木ですね~」
惚れ惚れしながら声をかけると、
みなさん、とても嬉しそうに応えてくれます。
 
「この木は硬いから、この細さにできるんです。
 細いからもあるだろうけど、軽くてホントに担ぎやすくて・・
 他の地区もこの担ぎ棒を真似たいと見に来るんですよ。」
 
これだけたくさんの人が、木に対して、熱い思いと誇りを抱いている…
何か特別な絵が描いてあるわけでもなく、彫刻があるわけでもない、
木を削っただけの、ただの2本の棒にすぎないのに…
 
日頃、木に対する関心が薄れている、と思い悩んでいる私は嬉しくなりました。
そうこうしていると、前日お電話いただいたNさんが、
これまでの経緯を話してくれました。
 
「この担ぎ棒は80年程前、隣町の採銅場の近くに生えていたアスナロを伐って、
 皆で運んできた、という言い伝えがあります。
 ところが、複数の大工さんに見てもらったところ、杉ではないかと言う声が多くて…」
 
なるほど、杉と見えなくもありません。
笹杢(ササモク)状の木目が際立ち、ヒノキでないのはわかります。
とはいえ、杉ではないと感じました。
木目の感じから見た私の第一印象は栂(つが)。
でも栂は寒冷地。100年前の九州でも希少で、標高の高いところにチラホラあった程度のはず。
それにもしも栂ならば、もっとこげ茶色の経年変化となるはず。つまり栂ではない・・
 
樹種の特定は一休みして、
杉やヒノキの担ぎ棒を使っている他地区の山笠を見せていただくことにしました。
最初に杉の担ぎ棒を見学しました。Nさんは言います。
 
「こうして端を抱えあげると、木がしなるでしょう。
 柔らかいと担ぎにくいし、杉で折れたところもあるんですよね。」
 
次に、ヒノキの担ぎ棒を見学しました。
端を持ち上げてみましたが、硬くて、棒は微動だにしません。
これなら、しならないので担ぎやすいでしょう、とNさんに尋ねると、
 
「ヒノキはたしかに硬くていいのですが、私たちの棒より随分重たく感じます。
 そこで、もしかすると私たちのモノは、硬い品種の杉なのでは?
 と思いご連絡したのです。」
 
杉より硬くて、ヒノキより軽い(?)木…
天然木特有の緻密で荒々しい木目をした針葉樹…
 
今回依頼を受けた中下山笠の寄り合い所に戻った私は、
先ほどの言い伝えを再度思い起こしました。
アスナロといえばヒバ(桧葉)。
これだけ緻密な年輪の九州産アスナロを、製材品で見たことはないけれど、
たしかに、青森ヒバに似ている…
 
「おそらくこの木は、言い伝えられているアスナロで間違いないと思います。
 青森ヒバの特性が参考になるでしょうから、調べてからご連絡しますね。」
 
そういって、私は現地を後にしました。
この話は次回へと続きます。
アスナロとわかったのならば、それを調達すればよいではないか、
とお思いかもしれませんが、私は迷っていました。
なぜなら、なるべく近くの木を使いたいからです。
 
年輪の詰まった長さ十数メートルの直材のアスナロを、九州産で探すのは難しい。
人工林が多い九州では、天然木のアスナロは希少だからです。
それゆえ、どうしてもとなれば、天然林の青森ヒバを選択することになります。
幸い、青森ヒバの入手ルートは持っていますし、
金額的な折り合いをつけることも可能かもしれません。
ヒバが、この用途に最も相応しい木であれば、その選択肢は有力でしょう。
でも私は、九州の木で実現できる方法を、もう少し調べてみたくなったのです。
 
いよいよ次回は、私がどんなご提案をしたのか、お話ししたいと思います。

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2010年 6月 14日

山笠の山車に使う担ぎ棒、どんな木を選べばいいの?(1)


GWが明けたばかりの先月6日、『木挽棟梁のモノサシ』の読者である
福岡県糸田町にお住まいのNさんからお電話をいただきました。
 
「山笠の山車に使用する担ぎ棒についてご相談したいのです。
 今使っている物は、とても素晴らしい木なのですが古くなってきました。
 そろそろ、それに劣らないモノを新調しよう、と話し合っているところです。
 11mの長さの物が2本必要なのですが…」
 
山笠(山車)といってもいろいろあります。
車輪があって曳くのか、それとも担ぐのか。
数本あるうちの2本なのか、それとも2本だけなのか。
そこで、用途を尋ねたところ、
使われ方の過酷さに少し驚きました。
 
「長さ11m程の担ぎ棒2本で、2トンほどの飾り山を車輪無しで担ぎます。
 町内の他の山笠では、新調した担ぎ棒が祭りの最中に折れたこともあって…」
 
有名な博多山笠の舁き山も担ぎますが、
担ぎ棒は6本で長さは6m弱、重さは1トンくらいと聞きます。
11mの木2本で2トンを担ぐということが、どれだけ1本の木に負担をかけるのか、
お話を聞くだけでは想像がつきません。
ただ、選木が如何に重要であるか、ということだけは理解できました。
 
「杉や檜など樹種によって、強度の違いがあるそうですが、
 杉岡さんの新聞記事では、同じ樹種(杉)でも、
 品種によっても大きなばらつきがあると書いてありました。
 80年間使い続けてきた軽くて硬い私たちの担ぎ棒を、
 まずは見ていただけませんか。
 相談する人によって樹種の見立てが違うので、
 ますは樹種が何なのか知りたいしですし、
 今後どうすればよいのか相談もしたいと思っています。」
 
お電話いただいたのは木曜日で、その週末は祭り本番ということでした。
今回見ておかなければ、来年まで観察することは叶いませんから、
早速、翌日お伺いする約束をして電話を切りました。
 
2本の木で、2トンを担ぐという極限の用途ともいえるこのご相談は、
木の強度を考える上で、学ぶことが多く大変勉強になりました。
次回、もう少し掘り下げたいと思います。

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2009年 7月 30日

杉の品種と適材適所

ヤブクグリ、ウラセバル、ヒノデ、メアサ、アヤスギ、ホンスギ、モトエスギ・・・
 
馴染みのない言葉でしょうが、これらは日田地方でよく耳にする杉の品種の名前です。
杉(Cryptomeria japonica)は分類上、一属一種と言われますが、
九州の杉だけでも栽培品種で言うと100もの名前があるということは以外に知られていません。
 
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(宮島寛・著「九州のスギとヒノキ」より)
  
百を数える名前の中には、地域によって呼び名が変化することもあります。
そんな異名同種であったり、それとは逆の同名異種であったりと、分類するのも至難の業のようで。
未だ品種の分類が確定されているわけではありません。
それでも、通直であったり曲がっていたり、強度や含水率など、
品種によって同じ傾向があることは、まず間違いありません。
「氏より育ち」ではなく「育ちより氏」である、と言えると思います。
 
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(宮島寛・著「九州のスギとヒノキ」より)
  
さて、この品種による品質の差ですが、11年ほど前私は、
後の方向性に影響を与えたある貴重な体験をいたしました。
それはまだ私がこの世界に飛び込んで間もない頃のことでした。
当時私は、杉の赤身の強度は白身より高いのではないか、という仮説を立てていました。
そこで、福岡県森林林業技術センターに杉の桁材を百数十本持ち込み、
センターの研究者の方々の協力を得て、強度の検証を行いました。
 
一本一本重さを量り、木口(年輪部)を金槌で叩き、音の周波数を採取します。
これにより、木材の強度=ヤング係数の推定値が計測できるわけです。
残念ながら、強度において赤身が強いとは言えませんでした。
ところがこのとき、思わぬ収穫を得ることになりました。
それは、同じ九州の杉なのに、強度の差が、
ピンとキリでは3~4倍もあるという事実でした。これには衝撃を受けました。
品質の差があるということは分かっていたけれども、
数値にそれだけの開きがあるなんて、思ってもみませんでしたから。
 
そして同時に、面白いことに気づきました。
それは、先代・先々代から教わった、「この木は硬い、この木は柔らかい」、
といった「木の見立て」は正確である、ということでした。
さらに、この硬い木、柔らかい木の差が、
品種の違いと年輪幅に関係していることを感覚で掴むことができました。
 
それからというもの、私は
年輪を見ただけで品種を見分けられるようになりたい、と思うようになりました。
すると面白いものです。徐々にではありますが、
剛性が高く硬くて強い品種(a)、
多少柔らかいがしなって折れにくい曲げ強度の高い品種(b)、
柔らかくてサクサクしているが、曲がったりねじれたりしない品種(c)、
などの特性がわかるようになってきました。
ちなみにa)は柱や桁・梁といった構造材に、b)は桁・梁などの横架材に、
c)は板材や下地材、節が少ないものは建具に、などといった用途が考えられます。
同じ山に多くの品種の杉が植えられていたりもしますが、
例えば家を一軒建てる場合、最小の面積を伐採するだけで、a~cといった
様々な用途の木材が採れると考えれば、合理的と言えるのかもしれません。
 
cimg4904.JPG
  
ここで皆さんに一つ質問をしたいと思います。
北部九州では、ひとつながりの山に杉といっても多様な品種が植えられています。
この事実は、どのように捉えられているとお思いでしょうか?
 
今のところ、この杉の品種によるバラつきは、大きな欠点であると見なされています。
大量生産、安定供給、品質均等を図るには素材の均一化が効率的ですから、
弱い物、品質の劣る物に基準を合わせることになってしまいます。
その結果、良いモノの価値が付加されなくなる、ということが起こるのです。
 
外材8割、国産材2割、という木材の自給率的観点からすれば、
林業コストを削減し、木材加工を合理化させる、という論理になります。
リアリティを持って考えるならば、これは正論です。
国際競争力を考える時、国産木材の利用を促進するためには
確かに避けて通れない考え方であると思います。
しかしながら、手塩にかけて育てられた良い木材は、
もっとそれなりに評価されてもよいではないか、と感じます。
でも残念ながら、それらの行き先は、年々狭まっているような気がしてなりません。
 
cimg5682.JPG
 
本来、良い物というのはどこに使われるのが望ましいと思われますか?
私は、樹齢以上に「材齢」を重ねられる建築物に使用するのが良いのではないかと考えています。
そして、できるならばぜひとも、伝統的な木組みの建築物に使用してほしい、と願います。
 
伝統的な建築物の魅力は、なんと言ってもその美しさにありますが、
美を構成する要素に、木のクセを活かした木組みを欠くことはできません。 
伝統的な建物づくりは、木のバラつき・欠点はすべてクセであり特性であると見なします。
これこそ、「適材適所」と言えるのではないでしょうか。
  
8月9日(日)の九州民家塾では、山を散策し氣をチャージしながら(笑)、
そんな先人たちの考え方や工夫などを、私が気づいた範囲内でお伝えできればいいな、とも思っています。
幸い、日田市上津江には多品種の杉が植えられた試験林(50年生くらい)があります。
また近くには、吉野から苗木を移入した美しい杉の人工林(100年生超)もあります。
 
なにかとお忙しい時期にて恐縮ですが、ご興味のある方はぜひご参加くださいませ。^^

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