2009年 6月 19日

真竹の筍を食しながら森の未来を考える。

カテゴリー 杉の文化研究所

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数日前、真竹(マタケ)のタケノコを炭焼きして食べました。
山に近い私たちの地域は、様々な種類のタケノコを食します。
時期的に一番早いのはタケノコの王様、孟宗竹。
次に「ハチク」、「ゴサンチク」と時節が移り、
最後が「マタケ」で今頃となります。
好みは様々だと思いますが、「マタケが一番美味い」という方も多いようです。
 
ちなみにタケノコは、林業生産物の一つですが、
孟宗竹以外のタケノコはあまり売り物になっていないと思います。
話は飛躍しますが、みなさん日本の林業生産高をご存知でしょうか?
 
答えは年間約5000億円です。
日本のGDPが560兆円なので0.1%もありません。
数字だけを見ると、中堅上場企業の年間売上程度であり、
産業といえるだけのダイナミックさは見られません。
主産業の代表格、トヨタ自動車の売上高は、
昨年度大幅な減収とはいえ売上20兆円(連結決算)。
産業政策などを考えた場合、重視されるのは数字を見るとよくわかります。
  
つづいて、林業就業者を見てみたいと思います。
全就業者人口比率で言うと、農業5.3%、漁業1.1%です。
それでは・・・
林業は何%だと思いますか?
 
答えは、0.1%以下です。
林業就業者数は平成16年のデータで6万人。
この年は、全就業者人口が6730万人なので計算すると0.09%。
しかも6万人の中には近年、統計の就業者人口に加えられた65歳以上が35%も含まれます。
現在はそれから5年が経っていますのでさらに減少していることでしょう。
  
よく農林漁業とひとくくりにされていますが、このように見てみると、
林業だけが桁違いに弱っていることがお分かりいただけると思います。
経済的にも、また政治的(票田的?)にも、「林」関係は影響力に乏しい業界だと感じるのです。
  
GDPでも就業者人口比率でも0.1%に満たない、
そんな林業の現状ですが、大きな数字を抱えています・・・
 
森林は日本の国土の66%を占めているのです。 
 
このうち、人工林は森林の約4割を占め、天然林は約5割、
その他(無立木地・竹林)が約1割となります。
人工林のほとんどはスギ、ヒノキ、カラマツなど建築資材等に利用できる針葉樹林です。
これら人工林は国土の26.4%(66%×40%)を占めています。
わが国の最近の木材需要量は、8千万~9千万m3 程度で推移しています。
外材の占有率が8割と高く、国産材の自給率は2割程度です。
ですが、木材は毎年成長するので、国産材も机上の計算では、
今とは逆の8割を供給するだけの蓄積量があるのです。
 
一方で、治山・治水的側面からも、人工林は間伐という手入れをする必要があります。
木材資源を得ながら同時に、地表に植物が繁茂する環境を保つためです。
昨年までの原油をはじめとする資源高の構図は、経済的に厳しくありつつも
木材という資源を見直すような勢いがありました。
さらには、二酸化炭素の問題、環境税などの政策により、
森林に手を入れるベクトルは徐々に強まってきているように感じました。
  
ところが、一昨年のサブプライムショックから続いてきた世界的な金融危機は、
それを大きく後退させるという、影響を及ぼしています。
対外通貨に対し一方的な円高傾向にあり、為替の要素だけでも
輸入品価格を押し下げる傾向にあります。
さらに、林業から産出される木材の生き場所は建築・建設業界です。
将来への不安、金融機関の貸し渋りなど住宅需要は急激に収縮し、
需給バランスが崩れています。
それにより、半年間で木材(丸太)の単価は3~4割も下落しました。
それでも買い手がつかず、たとえ国や県から補助金が支給されても
赤字となってしまうような、間伐できない状態となっているのです。
 
政府は、多くの失業者を林業へ、という政策を声高にリリースしましたが
現実は、木を伐り出しできる技量のある林業従事者は激減しています。
この構図は、漁業にも農業にも同様に表れていますが、
就業者人口比率が一桁低い林業が最も深刻だろうと思います。
 
目の前に木はあるのに、伐り出せる人がいない・・・
このままでは、そんなことが起こってしまうとも限らない。
限界集落ならぬ、「限界産業」化しているような気がします。
 
地下資源の中で豊富な鉄でさえ、可採年数はあと230年しかないというデータがあります。
限りある地下資源を次世代に継承するためにも、
つくり出すことのできる唯一の資源である「木材」を活かした方が良いのは明らかだと思います。
 
でも、残念ながら林業は、経済力も政治力も非力です。
木材に関わっていない方々の力なしには、どうにもならないところまで来ています。
そのためにも、生活者にとって「林」の問題が身近になる必要があると思います。
それには一体、どんな切り口があるのでしょうか・・・

コメント(4)

コメント(4) “真竹の筍を食しながら森の未来を考える。”

  1. sowakaon 2009年6月19日 at 21:31:28

    こんばんわ、久しぶりにコメントさせていただきます。

    昨今の日本政府はエコというもにかこつけて、やたらと環境問題に関心があるような風潮を
    かもし出しているかのように思えます。
    家電製品の買い替えのポイント、エコカーの買い替えによる減税、補助等々。

    しかしかなり根本的なことがすりかえられているように思います。

    わたしの両親(63)ですが、とにかく物持ちが良く、物を大切に使い、いつまでも大事にしています。

    その影響で古物が好きになったのですが(笑)

    職業柄、資材は持続可能な自然材になりますので、使い捨てという概念がやはりどうしても受け入れ
    られにくいんですよね。そうしていると、必然的に物品の購入の際に‘果たしてこれは必要か?’と
    毎度自問自答しながらの毎日です。

    話はだいぶ逸れてしまいましたが、持続可能、サステナブルな概念にもっと目を向けなければいけませんね。

    リッター38kのプリウスも大事ですが、それより20年も30年も昔の車を大事に乗っている方が、わたしは超エコな人ではないかと思いますな。

  2. adminon 2009年6月20日 at 10:14:51

    SOWAKAさま
    コメントありがとうございます♪

    >根本的なことがすりかえられているように思います。

    かなり多くの皆さんがお感じになっていると思います。共感します。^^

    >物を大切に使い、いつまでも大事にしています。

       → その影響で古物が好きになったのですが(笑)

    ここが「肝(きも)」ですよね。
    ただ辛抱しなさい、では楽しくない。
    エコポイント、エコカーも便利さや楽しさを上手に利用していように思います。
    本来の「持続可能、サステナブル」は、楽しい、であったり
    心地よい、であったりするような世界観が問われている気がします。

    >それより20年も30年も昔の車を大事に乗っている方が、わたしは超エコな人ではないかと思いますな。

    同感です。私の普段乗る車は平成3年型、今や廃番の日産ダットラです・・・(笑)
     
    今回記事に共感していただける人が行動に落とせる受皿、
    それは商品であってもよいのかもしれませんが、
    何かそんなものが必要な気がするんですよね。。。

  3. Dream Writeron 2009年6月21日 at 8:48:21

    筍の炭焼き、おいしそうですね!
    混ぜご飯や煮物の筍が大好きですが、筍の天ぷらも好きです。
    ほくほくしてて、お菓子みたいだと思います。

    林業の状況、初めて知りました。
    >つくり出すことのできる唯一の資源である「木材」を活かした方が良いのは明らかだと思います。
    確かにそうですね。
    木材が活かされる環境になってほしいです。

    社会がどんどん高速化しているので、
    人々の生活のスピードもどんどん加速していますよね。
    「今すぐ!」というのが本当に多い。
    どんなことでもすぐに結果を求める傾向が強いと思います。
    私にもそういう部分がありますので、神様が息子を派遣して
    下さったんだと思っています。(笑)

    1本の木を育てるのに、長い時間を要するというのが
    頭ではわかっていても、「長い時間」という感覚が実感できない人が
    多いような気がします。

    鍾乳洞の探検家が、ある鍾乳洞で石筍が何本も切断されているのを見て
    号泣したそうですが、どれだけの時間をかけて作られたものなのか
    理解できない人、そういう感覚を持ち合わせていない人が
    何も考えずに切ったんじゃないかなぁと思っています。

    すぐすぐ何か具体的な結果に結びつくわけではないですが、
    長い時間を経て作られる・成長するものの価値、
    人間の手で短期間でどうこうできないものの価値が
    もっと知られるようになればと思いました。

    自然の営みというか、木の生育というのは、
    生産工程通りに進むわけじゃないし、
    工業製品のように原料の配合をこうすれば、こうなる
    と、単純な予測ができるものでもない。
    そういうものへの畏敬の念や愛着みたいなものを
    子どものころから持てるといいなぁと感じています。

    私が木が好きなのは、やはり小さい頃の環境だと思っています。
    庭に木がたくさんありましたし、なぜかお風呂はヒノキでした。
    生活は豊かじゃなかったと思うのですが、両親はこういうところに
    お金をかけたかったのかな。

    まとまらない長文になってきました(汗)

    単純に「木っていいなぁ」「木ってスゴイなぁ」というのを
    大勢の人が感じるようになればが、何か変わっていくんじゃないかなと思います。

    息子が生まれたときに市から枳殻をプレゼントされました。
    実家の庭の隅っこに植えてもらいました。
    息子は「こーちゃんの木」と言って、実家に行くと挨拶(?)しています。
    自然に恵まれた環境ではないので、日常の小さな機会を利用して、
    木や植物に触れさせたいと思っています。

  4. adminon 2009年6月22日 at 10:11:49

    Dream Writer さま
    いつもありがとうございます!^^
    ブログの一記事としても余りあるほどの
    コメントをいただき、ただただ感動いたしました。
    こんな内容をコメント欄に閉じ込めておくことは
    もったいないので、記事としてアップさせていただきます。
    心より感謝いたします。

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