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2012年 4月 05日

日土小学校を訪ねて

カテゴリー 木造建築の味覚


10日ほど前のこと(2012年3月25日)になりますが、
愛媛県八幡浜市にある日土小学校を見学してきました。
日土小学校は、近代建築(モダニズム建築)の保存と記録を目指す
国際組織DOCOMOMOの「DOCOMOMO Jpan20選」に選ばれた唯一の校舎です。
以下の文章は、見学した際知り合った、この建物の保存運動にご尽力された方から
今後の保存運動のためにもコメントを、と依頼され書いた感想文です。
この建物の存在を一人でも多くの人に知ってほしいと思いましたので、
久しぶりにブログへアップすることに致しました。
 
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私が日土小学校の存在を知ったのは2005年。
福岡県小郡市で開催された「木の学校づくり」講演会でのことでした。
主催は地元建築士会有志による木造校舎の研究グループ。
近隣の中学校改築計画に端を発した集まりだったと記憶しています。
講演者は筑波大学の安藤邦廣教授。
秋田県横手市立栄小学校建設などに携わった建築家です。
氏は、木の学校の素晴らしさを、二つの木造校舎の写真を用いて説かれました。
一つ目が、宇和町小学校(現・米博物館)。
そして二つ目が、今回訪問させて頂いた日土小学校でした。
昭和60年(1985)に開催された第二回木造建築研究フォラムで
この二つの学校に出会ったと伺いました。
 
木の建築の良さを伝えるには、どのような切り口が良いか、
思い悩んでいた私にとって、その話はとても新鮮に感じました。
学校建築にはいかなる工夫が必要なのか初めて耳にしたからです。
でもそれだけではありません。私には木の学校の体験があったのです。
二つの校舎のスライドを眺めていると、懐かしさがこみ上げ、
なんだか楽しい気分になってきました。
私は、小学1年から5年生まで、築百年ほどの木造の老校舎に通いました。
真夏には涼しい床下で遊んだこと、抜け節にビー玉を落として覗いたことなど
たくさんの思い出があります。
ところが6年生になると、その校舎は建て替えのため取り壊されることになりました。
卒業する2週間前、真新しいコンクリート造校舎に足を入れたとき、
嬉しさと共に寂しさが湧いてきたのをはっきりと覚えています。
 
安藤先生の話を聞いた翌々年の2007年6月、
私は、日本木青連全国会員福岡大会において
シンポジウムを担当することになりました。
そこでテーマを「木で学校をつくるということ」にしました。
安藤先生の話をたくさんの人に聞いてもらいたいと思ったのです。
結果、一般入場者700名以上、会員・OB800名以上の参加があり、
木造校舎への関心の高さを肌で感じることができました。
それ以来、各地の木造校舎を少しずつ見て回っています。
旧・宇和町小学校にも二度訪れました。
 
今回の日土小学校訪問は、思い出深い見学となりました。
深夜1時過ぎに大分へ入り前泊。翌朝、佐賀関からフェリーを使い
日土小学校に着いたのは午前11時頃だったと思います。
会場でお会いした方に話を伺ったり、写真を撮ったりしていると
あっという間に時間が過ぎていました。
このとき撮影した写真は450枚ほどを数えます。
ひと段落して時計を見ると午後2時でした。
昼食をとるのも忘れ3時間も滞在していたのです。
建物の素晴らしさは、いまさら私が言うまでもありません。
研ぎ澄まされた工夫の集積は、見る者を虜にします。
しかし、それに勝るとも劣らない衝撃を、私は受けてしまいました。
それはこの地域を二分した保存の如何に纏わるエピソード。
「子供たちを文化財の犠牲にするつもりか」
という反対派の言葉でした。

小学校というのは、在校生だけでなく家族や
その地域すべての人々が関わる建物です。
日土小学校の卒業生も数多く住んでいます
さらには災害時、避難所という役割なども加わる特別な建物。
それだけに、この一言は重い、と感じました。
この建物に魅かれ、それまで無邪気にシャッターを切っていた自分に
気恥ずかしさと罪悪感を抱いてしまいました。

それでも、この素晴らしい建物が残り、
現にこうして使われていることに、今はただ感謝したい気持ちです。
保存運動に賛成した方はもちろんのこと、
たとえ反対であっても容認した方々がおられたことで、
この建物は、はじめて今ここにあるのだと思います。
学校はその地域のシンボルとして親しまれるべきもの。
この学校の素晴らしさが、
一人でも多くの人に伝わってほしいと願ってやみません。

これからも、木の学校について思案を深めていく所存です。
日土小学校には、少なくともあと二回、
今回は春でしたから、夏と冬にまた訪ねたいと思っています。
今後とも保存活動が末永く営まれますことを心より願っております。
見学させて頂き本当にありがとうございました。
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