アーカイブ 「木挽棟梁のモノサシ」

2012年 7月 25日

「海の見える家」完成見学会の報告


 
遅くなりましたが、14~15日の完成住宅見学会のご報告です。
私が現地に行った14日は九州北部豪雨となった一日。
九州高速道は閉鎖。一般道も通行止めがあり、現地まで片道3時間ほどかかりました。
そのような悪天候の中、参加者の方はほぼ予約通りの24組で50名ほどの見学がありました。
翌15日も同じほどの見学者が訪れ、二日間で合計50組100名ほどにおこし頂きました。
一般住宅なので、事前予約制にしていましたが、2日間とも終了時間間際まで
問合せの電話が留守電に多数入っていたようです。
見学できなかった方には、ご迷惑をおかけしました。

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2012年 7月 09日

いわき市・板倉の仮設住宅 寄稿記事

7月8日(日)付けの西日本新聞朝刊に、
いわき市の板倉構法による仮設住宅の記事を寄稿しました。
板倉の仮設は、被災時の仮設住宅にとどまらず、
今後の住宅の在り方にも示唆を与えているように思います。
 

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2012年 5月 18日

新福岡人

カテゴリー 木挽棟梁のモノサシ


 
一昨日(2012-05-16 wed)の
西日本新聞夕刊に掲載していただきました。
第60回全日本広告連盟福岡大会の開催記念特集
「新福岡人~未来を開くのは私たちだ!」にて、
6名のうちの一人として取材いただいたのです。
 

 
話をいただた折は、私のような者が…
と正直尻込みしてしまいました。
しかし同時に掲載される5名の方々のことを伺いするうち、
そんな方々とご縁ができればいいな…
などという欲望が生まれてきてしまい、
無恥厚顔とはわかりつつ
お引き受けした次第です。
 
今年、新しい技術を取り入れようと考えていた矢先。
此度のできごとは、天からのエールであると
前向きに解釈しようと思います。
 
掲載記事


掲載プロフィール


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2011年 2月 23日

再生民家「求菩提の家」見学会


新聞連載中より数多くのお問い合わせを頂く古民家の再生。
昨年8月には、人数限定での見学会を企画しましたが、
今回はどなたでも見学可能な機会をいただけることになりました。
 
北九州市で自然食品店を営む女性店主が、
ご主人の生家(豊前市)に現存する明治三十年代建造の納屋を現地再生。
けっして立派ではない、どこにでもある古いだけの民家。
ゲストハウス的用途なのでそれほど予算もかけられない。
それでも今はたくさんの方から、「旅館みたいね!」
と言われるまでに変身を遂げました。
 
35坪のうち再生部は約30坪、増築部約5坪。
柱・梁など構造材には、古材、新材とも漆塗りが施され、
数人が入浴可能な五右衛門風呂、
針・広葉樹どちらも可能な多燃料型の薪ストーブなど見どころ満載です。
 
地元の恵まれた自然を活かしつつ、健康を取り戻すための
古民家体験施設として今後の活用策をご考案中で、
断食道場や音楽会なども催されているようです。
 
近くには、求菩提温泉「卜仙の郷」や
古民家を再生した「茶房・山帰来
http://www.sankirai.jp/
など立ち寄り処もあるとのこと。
暖かい初春の時季ぜひお出かけください。
 
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お申し込み・お問い合わせは…
古民家蘇生工房
電話:093(452)3526、FAX:093(452)3527
e-mail: info@kominka-y.com まで
 
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再生民家「求菩提(くぼて)の家」見学会のご案内
 
日時:3月6日(日)10時~17時
場所:福岡県豊前市
ミニ講話:10:30~
  「この家の味わい方」 柳本隆彦&杉岡世邦
会費:無料

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2010年 12月 13日

「杉と漆喰の家」見学会(12/25、26)のご案内


 
今年の5月、約百人の方にご見学いただいた「土と木の家」は
猛暑のこの夏、エアコンを3回しか使わなかったと聞きました。
なるほど、吉田兼好の時代から「家の作りやうは夏をむねとすべし」(徒然草)
と言われますが、夏涼しい家は、冬の寒さに我慢を強いられるのでしょうか。
 
エアコンなしでも、陽だまりのような暖かさを得ることができる、
と建築工房「悠山想」の宮本繁雄さんは言います。
工夫の一つが「そよ風」というソーラーシステムを使うこと。
なんでも、太陽熱で暖めた空気によって床暖房するのだとか。
 
そこで、心地よい暖かさを体感していただくべく、引渡し間近の
「杉と漆喰の家」(朝倉市甘木)を見学させて頂けることになりました。
当日は、宮本さんと私(杉岡)の講話(25日14時、26日11時)も予定しています。
 
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宮本さんからの伝言・・

「二人で老後、ときどき大家族の家です。
 土壁により調湿された空気の心地よさ、
 古民家のように木目が浮き立つ杉の床板の肌触りなど、
 味わいどころ満載です」
 
*なお、一般住宅なので
詳しい住所や地図のお問い合わせは…
(有)建築工房 悠山想(ゆうざんそう)
電話:0946(21)5076、FAX:0946(21)5077
e-mail: yuuzansou@h2.dion.ne.jp まで。
 
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「杉と漆喰の家」見学会のご案内
 
日時:12月25日土曜日(13時~17時)
      ~26日日曜日(10時~17時)
場所:福岡県朝倉市甘木
ミニ講話:25日土曜日14時、26日日曜日11時
  「この家の味わい方」 宮本繁雄&杉岡世邦
会費:500円
 

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2010年 7月 15日

トークショー「手が届く古民家再生」


 
「土と木の家」を体感する企画、第二弾。
今回は、古民家蘇生工房 柳本隆彦さんの手による再生古民家「浮羽の家」(築130年)を訪ねます。
場所は、九十戸余りの茅葺き民家が現存するうきは市 新川・田篭地区。
この家にお住まいのM さんご夫妻は、ご主人の定年を期に所沢市から移住し4年。
今では地域にすっかり溶け込み、人生の楽園ともいえる
自適な暮らしを楽しんでいらっしゃいます。
 
つくり手の柳本さんは楽しそうに語ります。
「私の仕事は、“長年の夢”のお手伝い、なんですよね…」
 
すまい手のMさんは微笑みました。
「あのまま所沢にいたら、今頃、喧嘩ばかりやってただろうねぇ…」
 
当日は、私(杉岡)が聞き手となって、
住まい手のMさん、作り手の柳本さんから、
初めて来たのになぜが落ち着く、新たらしいのに懐かしい、
そんなM邸の秘密を引き出してみたいと思います。
 
近くには、古民家を活用した「ギャラリー安政」
日本棚田百選の「つづら棚田」などもあります。
盛夏の中のひとときの涼風を、味わってみてはいかがでしょうか。
 
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『木挽棟梁のモノサシ』 トークショー
「手が届く古民家再生」 のご案内
 
日時:2010年8月1日(日)(10時~12時)
場所:福岡県うきは市新川
トークショー:10時30分~12時(90分程)
  「手が届く古民家再生」(Mご夫妻、柳本隆彦、杉岡世邦)
会費:1,000円
お申込先:古民家蘇生工房(柳本まで)TEL(093)452-3526(10時~17時)
       info@kominka-y.com  FAX(093)452-3527
申込締切:2010年7月29日(木)まで

◆会場に限りがあるため、20名限定とさせていただきます。
(一般の方を優先させていただく場合がございます。)
◆集合場所の地図は、お申し込み頂いた方にのみ送付いたします。

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2010年 6月 17日

信じられないご縁。96歳のおじいちゃんの絵

カテゴリー 木挽棟梁のモノサシ


 
今朝、とても嬉しいサプライズがありました。
それは、この↑絵との不思議なご縁。
作者は大分県日田市にお住まいの96歳のおじいちゃん。
落款印(らっかんいん)の下には、2010.5.31との日付があり
つい最近、描かれたもののようでした。
 
この絵を私のところに届けてくださったのは I さん。
5年前に脳梗塞を患った父の介護のため、
定期的におこしくださっているヘルパーさんです。
 
先日、I さんがこの絵を描いたおじいちゃんのところに介護で訪問したときのこと、
久しぶりに絵を描いたので見て欲しいと、誇らしげに話しかけてきたのだとか。
見た瞬間 I さんは、「どこかで見たことのある景色だな」と思いながら尋ねました。
 
「おじいちゃん、こんな身体だからデッサンには行けないでしょう。
 なにを見て描いたんですか?」
 
「それたい」
 
おじいちゃんが指差した、整然と画材の並ぶ机の上には、小さな紙切れが一枚。
よく見ると、それは新聞の切り抜きでした。
I さんはびっくりすると共に、なぜ見たことのある光景だったのか覚りました。
 
「それは、私が介護でお伺いしている方の息子さんが書いた記事なんですよ!」
 
そうなのです。冒頭の絵は、私が撮影した日田市中津江村・宮園神社の光景、
『木挽棟梁のモノサシ』13回で使用した写真だったのです。
 
少し残念なのは、写真部分だけが切り抜かれてあった、ということ(笑)
I さんは、記事の内容について話しかけたそうですが、
 
「内容は、よう覚えとらん」
 
と、そっけない返事。
でも、切り抜きの傍には大きな虫眼鏡が佇んでいて…
人の歩く姿(手足の動き)が間違っていないか、
写真が小さいので確認しながら描いたのだと仰ったそうです。
 
この写真を、この世で最も長く鑑賞したのは私ではなくて、
おそらくは、この96歳のおじいちゃんだろうと思います。
そして、私の記事の写真を題材に絵を描いてくださったのも、
おそらくは、この世でこのおじいちゃん一人であろうと思われます。
今回のこの不思議なご縁に、私は心から嬉しくなりました。
本当に有難うございます!
 
I さんも嬉しくなって、この絵を私に見せたいと申し出たところ、
盗作になるのではないか、とご心配なされたのだとか。
ご心配なんて、とんでもないです。
 
@@@
96歳のおじいちゃんへ
素敵な絵を描いてくださって有難うございます。
もしも今回の記事が、書籍になるというような奇跡が起こった暁には、
ぜひ、あなたの描かれた絵を、掲載させていただきたいと思います。
感謝
@@@
 
冒頭の絵の原画がこちら↓です。^^

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2010年 6月 16日

山笠の山車に使う担ぎ棒、どんな木を選べばいいの?(3)


福岡県糸田町「中下山笠(なかしもやまかさ)」
 
三日間に亘り書いていますので、
この山笠の山車に使う担ぎ棒について、
もう一度おさらいしたいと思います。
 
長さ11mの木2本で、重さ2トンほどの飾り山を担ぎます。
そのために、
①真直ぐな木が望ましい。
②担ぐため、できるだけ軽い方がよい。
③担ぎやすいのは、硬くて、しならない物。
④折れてしまうのはNG。
この4つの特性を、バランスよく兼ね備えている物を考えます。
 
まず、①や②を勘案すると、広葉樹を選ぶのは難しくなります。
③の硬さこそ、申し分ありませんが、広葉樹は重たいのです。
それに、真直ぐな木が希少なため、割高となります。
 
では、針葉樹の中で、今回の条件に優れた木は何が良いか、
次に考えてみたいと思います。
 

 
現在使用しているのはヒバです。
まずは、その特性と比較しながら、杉とヒノキを見てみましょう。
 
②の重さはどうか?
ヒバの気乾比重は41とあります。
気乾(きかん)比重とは、木材中の水分をゼロにしたときの木の重さのことです。
ちなみに、ヒノキも同じ41で、杉は38。
ヒノキとヒバの重さは同程度、杉は少し軽くなります。
 
③のしなりやすさはどうか?
これは、曲げヤング係数というところを見ます。
ヒバは8.2に対して、ヒノキは10.4、杉は7.2。
ヒノキのほうがヒバより硬く、杉はヒバよりしなりやすい、と読めます。
 
④の折れやすさはどうか?
これは、曲げ破壊係数を見ます。
ヒバは698、ヒノキ744、杉582。
これもヒノキが最も折れにくいとデータが示しています。
(ちなみに、④に限っては、ヒノキより折れやすいヒバや杉でも、
 太く使いさえすれば、同等の強度を確保できます。)
 
これまでの4つに加え、担ぐときの肩への食い込み具合も考えてみましょう。
それは、表面の硬さがどうか、というデータから推測できます。
直径10ミリの鋼球で50㎏の荷重をかけた、ブリネル氏硬度です。
 

 
このデータを見ると、ヒバは2.37~3.11と硬く、
ヒノキの1.49~2.16 と杉の1.42~2.28は同程度の数字。
これから推測すると、ヒノキと杉は、肌触りが柔らかいということが言えると思います。
 
(ただし厳密には、アスナロと青森ヒバは品種が違うのだそうです。
 でも今回は、どちらも天然木ですし、同等の特性であると考え判断しました。)
 
以上を総合的に判断すると、今回の用途ではどの木が相応しいのでしょうか。
 
私は、ヒバよりヒノキのほうが良いのではないか、と推察しました。
それに、ヒノキであれば、高齢樹の木が福岡県産材で調達可能だし、
金額も青森ヒバより安く抑えられそうです。
(11mなので青森からの運賃だって馬鹿になりません…)
 
また、歴史の継承という意味では、アスナロを使うことも意義あるのでしょうが、
前回は「明日(ヒノキに)なろう」の木を使ったが、今回は機が熟し「ヒノキ」となった、
という物語も(強引かもしれませんが)「有り」かな、と思った次第です。
 
とはいえ、ヒノキでありさえすればよい、訳ではありません。
現役の担ぎ棒のように、80年使用できるような耐久性を備えるには、
赤身材でなくてはなりません。それも年輪のつまったモノ。
そこで今回、下の写真のような120年生程のヒノキをご提案することにして、
先週末、候補である立木を視察に行ってまいりました。
(山道が藪と化し、この1月に買ったばかりの愛車
 ホンダ・クロスロードは傷だらけとなってしまいましたが… 涙)
 
 
 
これで120~130年生なので、かなり緻密な年輪をしていると思われます。
このブログを、中下山笠の方もご覧のことと思いますが、いかがでしょうか。
 
ただ一つ、どうしてもクリアできない、大きな問題を抱えています。
それは、「割れ」です。
青森の方にお伺いすると、ヒバの方がヒノキよりさらに割れやすいということですが、
それでもヒノキは杉に比べ、割れがすぐに、そして深く入ります。
今回は芯持ち材となりますので必ず干割れが発生します。
そして、何も施さなければ、丸太の芯まで割れは入ってしまいます。
その程度をいかに少なくするか、それは自然の摂理に逆らう難問です。
 
建築に使用する柱などであれば、通常「背割り」というものを入れますが、
今回はその方法がとれません。
どうすればよいか現在精査中ですので、改めてご報告したいと思います。
 
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誤解のないよう付加えますが、今回の記事は、山笠の担ぎ棒全てが
ヒノキであったほうがよい、という主旨で書いているのではありません。
たとえば、博多祇園山笠の舁き山の担ぎ棒であれば、
おそらく杉で提案させていただくことになると思われます。
山車の形態によって考え方は異なってきますので、
あくまでこの記事は、ご参考程度にお願い致します。

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2010年 6月 15日

山笠の山車に使う担ぎ棒、どんな木を選べばいいの?(2)


長さ11mの担ぎ棒2本で、2トンの飾り山を車輪無しで担ぐ、
そんな過酷な用途に相応しい木は何なのか、
まずは、その使われ方を観察するため現地(福岡県糸田町)を訪ねました。
 
なるほど、その担ぎ棒は年輪が詰まっていて、
荒々しい木目をしており、力強さを醸し出しています。
「これは木目が猛々しくて素晴らしい木ですね~」
惚れ惚れしながら声をかけると、
みなさん、とても嬉しそうに応えてくれます。
 
「この木は硬いから、この細さにできるんです。
 細いからもあるだろうけど、軽くてホントに担ぎやすくて・・
 他の地区もこの担ぎ棒を真似たいと見に来るんですよ。」
 
これだけたくさんの人が、木に対して、熱い思いと誇りを抱いている…
何か特別な絵が描いてあるわけでもなく、彫刻があるわけでもない、
木を削っただけの、ただの2本の棒にすぎないのに…
 
日頃、木に対する関心が薄れている、と思い悩んでいる私は嬉しくなりました。
そうこうしていると、前日お電話いただいたNさんが、
これまでの経緯を話してくれました。
 
「この担ぎ棒は80年程前、隣町の採銅場の近くに生えていたアスナロを伐って、
 皆で運んできた、という言い伝えがあります。
 ところが、複数の大工さんに見てもらったところ、杉ではないかと言う声が多くて…」
 
なるほど、杉と見えなくもありません。
笹杢(ササモク)状の木目が際立ち、ヒノキでないのはわかります。
とはいえ、杉ではないと感じました。
木目の感じから見た私の第一印象は栂(つが)。
でも栂は寒冷地。100年前の九州でも希少で、標高の高いところにチラホラあった程度のはず。
それにもしも栂ならば、もっとこげ茶色の経年変化となるはず。つまり栂ではない・・
 
樹種の特定は一休みして、
杉やヒノキの担ぎ棒を使っている他地区の山笠を見せていただくことにしました。
最初に杉の担ぎ棒を見学しました。Nさんは言います。
 
「こうして端を抱えあげると、木がしなるでしょう。
 柔らかいと担ぎにくいし、杉で折れたところもあるんですよね。」
 
次に、ヒノキの担ぎ棒を見学しました。
端を持ち上げてみましたが、硬くて、棒は微動だにしません。
これなら、しならないので担ぎやすいでしょう、とNさんに尋ねると、
 
「ヒノキはたしかに硬くていいのですが、私たちの棒より随分重たく感じます。
 そこで、もしかすると私たちのモノは、硬い品種の杉なのでは?
 と思いご連絡したのです。」
 
杉より硬くて、ヒノキより軽い(?)木…
天然木特有の緻密で荒々しい木目をした針葉樹…
 
今回依頼を受けた中下山笠の寄り合い所に戻った私は、
先ほどの言い伝えを再度思い起こしました。
アスナロといえばヒバ(桧葉)。
これだけ緻密な年輪の九州産アスナロを、製材品で見たことはないけれど、
たしかに、青森ヒバに似ている…
 
「おそらくこの木は、言い伝えられているアスナロで間違いないと思います。
 青森ヒバの特性が参考になるでしょうから、調べてからご連絡しますね。」
 
そういって、私は現地を後にしました。
この話は次回へと続きます。
アスナロとわかったのならば、それを調達すればよいではないか、
とお思いかもしれませんが、私は迷っていました。
なぜなら、なるべく近くの木を使いたいからです。
 
年輪の詰まった長さ十数メートルの直材のアスナロを、九州産で探すのは難しい。
人工林が多い九州では、天然木のアスナロは希少だからです。
それゆえ、どうしてもとなれば、天然林の青森ヒバを選択することになります。
幸い、青森ヒバの入手ルートは持っていますし、
金額的な折り合いをつけることも可能かもしれません。
ヒバが、この用途に最も相応しい木であれば、その選択肢は有力でしょう。
でも私は、九州の木で実現できる方法を、もう少し調べてみたくなったのです。
 
いよいよ次回は、私がどんなご提案をしたのか、お話ししたいと思います。

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2010年 6月 14日

山笠の山車に使う担ぎ棒、どんな木を選べばいいの?(1)


GWが明けたばかりの先月6日、『木挽棟梁のモノサシ』の読者である
福岡県糸田町にお住まいのNさんからお電話をいただきました。
 
「山笠の山車に使用する担ぎ棒についてご相談したいのです。
 今使っている物は、とても素晴らしい木なのですが古くなってきました。
 そろそろ、それに劣らないモノを新調しよう、と話し合っているところです。
 11mの長さの物が2本必要なのですが…」
 
山笠(山車)といってもいろいろあります。
車輪があって曳くのか、それとも担ぐのか。
数本あるうちの2本なのか、それとも2本だけなのか。
そこで、用途を尋ねたところ、
使われ方の過酷さに少し驚きました。
 
「長さ11m程の担ぎ棒2本で、2トンほどの飾り山を車輪無しで担ぎます。
 町内の他の山笠では、新調した担ぎ棒が祭りの最中に折れたこともあって…」
 
有名な博多山笠の舁き山も担ぎますが、
担ぎ棒は6本で長さは6m弱、重さは1トンくらいと聞きます。
11mの木2本で2トンを担ぐということが、どれだけ1本の木に負担をかけるのか、
お話を聞くだけでは想像がつきません。
ただ、選木が如何に重要であるか、ということだけは理解できました。
 
「杉や檜など樹種によって、強度の違いがあるそうですが、
 杉岡さんの新聞記事では、同じ樹種(杉)でも、
 品種によっても大きなばらつきがあると書いてありました。
 80年間使い続けてきた軽くて硬い私たちの担ぎ棒を、
 まずは見ていただけませんか。
 相談する人によって樹種の見立てが違うので、
 ますは樹種が何なのか知りたいしですし、
 今後どうすればよいのか相談もしたいと思っています。」
 
お電話いただいたのは木曜日で、その週末は祭り本番ということでした。
今回見ておかなければ、来年まで観察することは叶いませんから、
早速、翌日お伺いする約束をして電話を切りました。
 
2本の木で、2トンを担ぐという極限の用途ともいえるこのご相談は、
木の強度を考える上で、学ぶことが多く大変勉強になりました。
次回、もう少し掘り下げたいと思います。

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